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Around the garden

フラワーエッセンスプラクティショナーによる植物や自然と過ごす日常とエッセイ

【小説】梨木香歩「海うそ」

読書日記

海うそ/岩波書店
¥1,620
Amazon.co.jp


夏のはじめに購入した梨木さんの物語「海うそ」をかなりゆっくりペースで読み終えた。


梨木さんの物語の世界は、深い。

西魔女からファンになった中学生の子とか後のほうの作品などなかなかついていきにくいかもしれない。


しかし、ファンが求めるのはその深さなのだ。

物語の深さ。


主人公の内面というのは簡単にはわからない。

ふつう、物語は主人公に共感しながら、読み進めるのだが、この「海うそ」はずっとわかりづらく、南九州のある島が舞台で、昭和初期に調査のため滞在する学者のフィールドワークの様子がたんたんと語られる。

島の歴史や風土、自然の描写、昭和初期という時代の背景に惹かれながら、読み進める。


その昔、修験道の島だったのが、取り払われ、モノミミという民間信仰の名残もあり、学者である主人公は様々な島の歴史を島のフィールドワークをとおして経験し、体感する。

すでになくなってしまったけれど、その残骸のような形跡を見つめながら。


しかし、またその50年後にその島へ訪れるとさらに、そのときに生きたものは過去のものとなっていた。

それは主人公のもつ闇や喪失の体験と重なり、よりいっそうその時間の厚みを感じる。


地名の話など、最近、広島の災害地の名前のことがネットでも取り上げられているけれど、そのときに生きている人にとっては当たり前だったことが何十年もたつと地名が言い伝えられるうちに変わって、痕跡がわかりにくくなり、それを伝えるような人もいなくなる。



私が住むところの近くに「花園町」というところがあり、駅の名前にもなっている。

素敵な名前だ。昔は花園だったのかしら・・と思うところ。

そしてその由来なんてネットで探しても出てくることもない。

しかし、つい最近、高齢者の方から聞いて初めて知った。

『花園町は昔、高松の御殿様に献上するための花を栽培していたところだから、花園町なんだ』

と。

ネットには出てこない生きた知識だ。


その土地が昔どういうところだったか、ずっとそこに住んでいる人はわかるかもしれないけど、

よそから来た人にはわからない。


歴史はただなくなるだけのものだろうか。

その場所に残るものはエネルギーでもあるのだろうか。




『喪失』がテーマらしい。


震災後に書かれたということもあるだろう。


アマゾンのレビューの中で、梨木さんのインタビューの言葉が書かれていた。

「喪失を意味あるものに変える力が人間にはある」


まさにそれが「物語の力」でもある。人の中にある物語。


過去のものを懐かしんだり、失ったものを嘆いたりするのはフラワーレメディーのハニーサックルの調和が乱れたときのパターンだ。

ハニーサックルの調和がとれた状態というのは過去と現在をつなぎ、未来のために活かすことができることだ。


そのようなことを 自然、信仰、人との関係など目に見えるものも見えないものも同時に考えさせてくれる作品かも。