Around the garden

フラワーエッセンスプラクティショナーによる植物や自然と過ごす日常とエッセイ

竹宮恵子「少年の名は、ジルベール」

少年の名はジルベール

 

図書館で3ヶ月待ちほどして借りて読んだ。

めちゃ面白かった。

 

70年代の少女漫画界についていろいろ知ることができた。

 

少し前に一条ゆかりさんの「5愛のルール」を取り寄せた。

これは子供の時に読んで、早く続きが読みたい~!!

と思いつつ、続きを読むことなく、未完で終わった漫画である。

それが随分後になって文庫でまとめられ、

後書きに一条さんによる当時の解説が書かれてた。

やはり、編集部により打ち切られた作品であるよう。

 

竹宮さんの本でも、当時の少女漫画の編集部は女性はいなくて

男性社会であることが書かれてあるが、

本当に読者の読みたいもの、作家が表現したいものについて

考えることなく、表現には制限もあり、売れる内容にすることが

先決であったのだろうと思う。

 

竹宮恵子さんと萩尾望都さんはよく並んで70年代に

よく読まれた少女漫画家さんとして紹介されるが、

二人が20歳に偶然、出会うというのも運命としかいいようがない。

この大物漫画家が同じ家に暮らしていたというのも。

 

本を読むとわかるが、その背後には増山のりえさんの存在が

ものすごく大きく影響をしている。

表だって出ている人ではないけど、少女漫画界の革新にかかせない人

ではないだろうか。

二人の才能をよりいっそう引き出し、彼らの刺激にもなり、

批評家にもなり、最大の読者でもあった。

 

彼女は非常に才能がある人だと思う。

風と木の詩」の後に小説版として出された

神の子羊」は増山さんがのりすはーぜというペンネームで

書いた3冊からなる長編だけど、めちゃめちゃ面白かった。

その前にも別の本を読んでいて、彼女の小説なら絶対読む気でいた。

竹宮さんの世界観となんの違和感もなく読める。

 

それもそのはず、竹宮さんの本を読んで、彼女の作品に

増山さんのペーストがかなり入っているのだとわかった。

 

とくに私が子供の頃から、

竹宮さんの作品で愛してやまない「変奏曲」という作品は

増山さんの力が大きいそうで、むしろ、私は増山さんの世界観のほうに

共鳴しているのかもしれない。

 

増山さんが出したヴィクトリアン・シール・ブックという本を持っているが、

アンティークなものが好きでヴィクトリアン風なシールを集めていた私には

願ってもない本だった。

趣味的にもかなり近いものがありそう。

 

それにしても、風木を世に出すのはなかなか大変だったろうなと

思うが、その苦労についても書かれていて

でも竹宮さんにとってもっとも描きたい作品だったから

その反響も大きかった。

いまとなってはボーイズラブな漫画はあふれているくらいだけど、

その先駆者だったから。

 

トーマの心臓」もそうだけどね。

40年前の45日間のヨーロッパ旅行の話もすごかった。

船で行くんだね。

ヨーロッパの話を描いてるんだから、当然行きたいよね。

私は萩尾さんや竹宮さんの漫画を子供のときに読んで

ヨーロッパにあこがれてたな。

 

竹宮さんは萩尾さんの才能に対して、驚き

苦しんでいたようだが、

萩尾さんのほうが抜きんでているようにも私は思わない。

むしろ、子供の頃の私は萩尾さんの作品は最初わからなくて

わかりやすい竹宮さんの作品のほうを読んでいた。

竹宮さんのいいところは絵も話もわかりやすいところにあると思う。

わかりやすいというのは才能だと思う。

 

ただ、葛藤というのは他者からの評価だけでなく、

自分があこがれるもの、自分にできないものをやっているという才能を

見た時のものが大きいかもしれない。

ある意味、人の才能を見抜く力が大きい人だともいえる。

増山さんと同じプロデューサー的な要素も彼女は持っていると思う。

それがわかる人だと自分も同業者だとかなりきつい。

確かに同居はきつかったのではないかと思う。

 

 

竹宮さんの作品では「変奏曲」が特に好きだったけど、

SF作品も好きだった。単行本もけっこう持っていた。

とくに「私を月に連れてって!」は彼女しか描けない漫画だ。

ものすごく好き。

キャラクターもいいし。おヤエさんの話は大好き。

これは全巻持っている。

 

風と木の詩」はまとまって読んだのは実は高校のとき。

週刊での連載だったから、まめに読んでいなかった。

でも、実は高校生くらいのほうがよく理解できる作品じゃないかと思う。

ユング心理学で有名な河合隼雄さんは

「心理学的に言うと『風と木の詩』は女の子のための話であり、女性が越えるべき内的な問題を描いている」と解説しているそうだ。

女性が風木を読んで、何に惹かれるのかというと

タイトルの風と木のように風のように危ういジルベールと真っ直ぐに自分に正直なセルジュのような二人のもつ性質かもしれない。

女性の中にこの二人の少年のような面があるというよりは

ないからこそ、惹きつけられるのだ。

 

少女漫画の世界はそれこそ占星学的に金星の世界。

高校生くらいのときは金星期でもあり、美しいと感じるものに

非常に惹かれる。

自分なりの美しいという価値観を育てるときでもある。

そこに当てはめるには少女漫画というのはかなりぴったりくる。

金星の部分をどう育てていくのか。

 

 

しかし、大泉サロンはいまはないけれど、

若い才能が集まって、刺激しあう場所っていいなあと思う。

同じ価値観で話ができる同等の相手がいるということの幸福は

簡単に作りだせないから。