Around the garden

フラワーエッセンスプラクティショナーによる植物や自然と過ごす日常とエッセイ

BOOK「やまぐちめぐみ作品集」強さと傷つきやすさ

やまぐちめぐみ作品集

 

高松は小さな個人書店がいくつかあり、行きたいと思っていた本屋ルヌガンガにようやく訪れた。

昔なら、そういう場所はすでに常連になってそうだけど

随分出不精になっていた。

ルヌガンガさんは思ったよりも広いスペースだった。

よくイベントをやっていて瞑想教室に興味があったけど、

ネットで見たらすでに満席の様子。

中で話している人たちの会話がすでに文化的 (笑)

 

一通り、置いてある本をいろいろ見ていく。

趣味のいい感じ、知的な好奇心を刺激する感じもあり。

その中でひとつ手に取り、これは買うべき本だと思ったものがあった。

 

それが「やまぐちめぐみ作品集」であった。

めぐみさんの作品はわたぐも舎さんで彼女が亡くなられた後に展示をされてて

見に行ったことがある。

彼女は2015年の9月に49歳という若さで亡くなった画家さんだ。

 

ツイッターでもお見掛けしていて、時々読んではいたが、

亡くなられたというのを聞いてちょっと驚いた。

 

本を見てみると私とは1つ違い。同世代だった。

50歳手前でこの世を去らなければならないなんてどんな風だろう。

しかし、彼女にはしっかりとした足跡があり、

たくさんの作品を残された。

 

めぐみさんの作風はかわいい感じの青い目をした女の子の絵が多いけど、

ただかわいいイラストという感じではない。

同世代ということを知り、ある意味同じ時代を生きていたとしたら

昭和独特の何かも感じられる。

私には絵を見ると実は苦しい。

 

これはどうしてなんだろうと思ったけど

よく似た絵があるとしたら

いわさきちひろさんの絵ではないだろうか。

ちひろさんの描く女の子もとてもかわいい。

しかし、かわいいと同時にはかなく、

彼女の場合戦争体験や戦争から平和への思いが込められた作品があるせいか

ずっしりとした重さを感じる。

 

めぐみさんの絵も少し近い。

絵から伝わってくるのは芯の強さ

これは彼女自身だろう。

 

本にも書かれてあるけど、20歳で結婚して子供もいるのだけど

31歳のときにすべてを捨てて大阪から上京されたと。

 

それだけでたくさんの重い感情やつらい過去を持ってそうとも思われる。

そして絵を描くようになってめきめきその才能を発揮していくときに

難病を発症。病気との闘いの中、絵を描き続けられていた。

 

その強さはどこからくるのか。

 

そして彼女の描いたものから伝わるもうひとつのものは

繊細で傷つきやすい、壊れやすいもの。

これもちひろさんの絵にも通じる。

 

でもそれはもっとも強いものを秘めている。

 

途中、シャガール風な絵にもなっているけど

なんかずーっと見てしまうんだなあ。

 

繊細で傷つきやすい人にとってめぐみさんの絵は

入口になり、その中で癒されていくのだろう。

 

よくその人の人生は長いか短いかは関係なく、

人生の中の質を問われる。

短くても情熱を注いで、自分を生きていられたのなら

幸せだったかもしれない。

彼女の人生ってなにもかも捨てて、上京して自然食レストランで働いてた

そうだけど、そういう食との関わり、同じような芸術的な人たちとの関わりとか

よしもとばななの小説のよう。

ばななさんとつながりのある奈良美智さんや原マスミさんとの交流もあったようだから

そのままばななさんの世界っぽい。

 

絵を仕事にするというのはけっこう難しいと思う。

しかも、その絵がすごいと思わせる絵というのは

テクニックではない。

その人自身を通して蒸留されたエッセンスが

どれだけ響くのかというところにかかっているようにも思う。