Around the garden

フラワーエッセンスプラクティショナーによる植物や自然と過ごす日常とエッセイ

【コミック】内田善美「空の色ににている」

秋っぽくなると内田善美の漫画が読みたくなる。

世の中に出回っている数少ないコミックを所有しているという特権で(^_^;)、アマゾンのマーケットプレイスでは3000円だか4000円にもなっている「空の色ににている」をわが物で読むことができる。


内田善美はちなみに男性である。ネットでは女性になっていることもある。

ずっと消息もわからず、漫画の再販はありえず、若い世代ではすでに伝説の漫画家となっている。

私にとってはリアルタイムで読んでいた大好きな漫画家さんだったけど。だからほぼ漫画は持っているわけで。


彼は調べてみると、蠍座だった。

なるほど、男性とは思えないほどの繊細なこころの描写は女性的ともいえる。

高畑監督も作品作りはものすごーーーく遅いことで有名でこだわりが強く、出来上がる作品は女性的だけど、あの人も蠍座だ。


「空の色ににている」という作品はぶ〜けで4か月にわたって連載された作品で、このように連作ものは初めてだったのではないだろうか。作品リストを見てみると。

それだけに代表作のひとつである。


主人公は高校生の青年、蒼生人(たみと)。陸上部に所属。

そして生物部の浅葱さんと出会う。そこへ冬城という絵を描く男性も加えて、不思議な関係性の中で時間を過ごす。


漫画でありながら、質のよい小説のよう。詩的であるといってもいい。

その情景や季節感、空気、いろんなものが伝わる。


例えばこんな文章

『しんと沈んだ空気の中で、一瞬光った彼の視線のそれよりも
僕のおどろきのほうが心臓の痛さをこらえた分だけ
激しかったかもしれない。』


『猫をてもとに置くってことはね、出会ったそのときにもう
やがてくる別れの悲しみを先どりしてるみたいなところがあってね
「ああ、やっぱりいってしまった」
っていう実現してしまった
出会いのときの不安の
淋しい確認みたいのがぼんやり累積してゆくような感じ』


『いったいどこで
いつどんなにして
植物たちが
自分に一等似合う
青をみつけたのかって

そんなこと考えると
哀しいくらい
心が無限になる。』



などなどこころが立ち止り、じんわりする言葉がたくさん。

それより高校生のセリフかい・・。


花や木の名前をヒツジを数える代わりに言うところも、ぽって気分になってくるという。


そのように言うことができる男子っているかいな・・・。(それを言ったのは浅葱さんだけど、これを描いたのは内田氏なので)


「失ったもの おとずれる問い」のくりかえしは昨日ブログで書いた「海うそ」のテーマにも近いのかな。


繊細すぎて、彼は描けなくなってしまったのか、漫画界の中でいられなくなったのかわからない。


この漫画に登場する主人公の飼い猫のように、冬城さんのようにふっといなくなってしまった。


まことに残念な才能だ。