赤毛のアンと自然描写その2
その1がかなり前に書いたので忘れかけてるでしょうが・・・。
朝ドラの「花子とアン」ではついに村岡花子さんが「赤毛のアン」の原書に出会い、訳するようになります。
日本が大変な戦争の最中に、命がけで翻訳した名作。
内容は戦争からほど遠い世界だけに、花子はその世界にいっとき想像の世界で支えになっていたのかもしれません。
村岡花子訳の「赤毛のアン」新潮文庫 より夏から秋の自然描写が素敵なので紹介します。
第22章「アンお茶に招かれる」 は8月の話です。
『西の樅の丘のきわから吹きおろしてくる、涼しい風がとりいれのすんだ畑をぬけ、ポプラの間をさらさらとわたっていった。果樹園の上にただ一つの星が輝き、ほたるが、「恋人の小径」のしだや小枝の間を縫うように飛んでいた。話しながらそれをながめていたアンは、風や星やほたるがみんな一つにとけこんで、なにか言うに言われない美しい魅惑的なものになっているのを感じた。』238P
アラン牧師夫人にお茶に招かれ、満ち足りた気分で家に帰って、マリラに語り掛ける場面です。
アンの満ち足りた気持ちがあらわれています。
そして秋になり、10月の描写。第24章「音楽会」
『紅(くれない)と金色で照りえた十月の朝だった。谷にはうすもやがたちこめて、それはあたかも太陽に―紫水晶や真珠や銀やばらやくすんだ青色やを、すくいあげさせようとして秋の精が張りわたした網かとも思われた。
しっとりと露にぬれた野原は銀色で織った布地のように輝き、森の窪地には枯葉がうず高くつもって、駈けてとおる足の下で、がさがさと音をたてた。「樺の道」は黄金色の天幕をつくり、下にはえているしだは枯れて褐色になつていた。』249P
なんとも素敵な光景( ̄▽+ ̄*)
その前の章でアンはケガをして、学校に行けなくなり、やっと行けるようになった場面なので、期待感があります。
11月の描写はあまりないのですが、
253Pに
『金緑色の西の空から新月が、葉の落ちたポプラごしに輝いており、マシュウは薪をわっていた。』
というのがあり、描写の中で何度も出てくるポプラの木がついに葉がおちているようです。
金緑色ってどういうのかしら。
色の描写は豊富で、22章のところでも『サフラン色やばら色の雲が空高くなびく夕闇の中を、・・』というのもありました。
「花子とアン」も今月で終わりかな。ドラマの脚色はちょっとんん?と思うところもありましたが、どんな終わり方になるのかしらね。